オーバーサスペンション インプレッション
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→「オーバーサスペンションの詳細をプロライダー佐藤選手に解説して頂きました。
CASE1 鈴木 大五郎氏
COURSE:TSUKUBA1000
BIKE: DUCATI PanigaleV2
明らかに、グリップを感じられる時間が長くなった、タイヤのグリップ力が上がったかのような感触だった。
これが、第一印象です。
リヤホイールが跳ねたり、前加重になり過ぎた時のように、リヤのグリップが希薄になるような時でも今まで以上にグリップしていました。
テストでは、パワーモードを切りかえてみました。トラクションコントロール等の電気的制御の介入度合の違いで、その効果の変化をを試す為です。
「レースモード」のようにトラクションコントロールの介入度合を減少させると、その効果を体感しやすく、
逆にトラクションコントロールの介入度合を高めると、その効果を体感しにくくなりました。
これは、オーバーサスペンションの効果の前に電気的制御の介入があるのだと思います。
しかし、それも車体のサスペンションのセッティングやオーバーサスペンションのセッティングで感じ方や効果は変わりそうです。
サーキットは路面の状況が良くグリップも高いので、積極的に乗ると効果を感じやすいと思います。
流した感じでスムーズに乗ると、効果を感じにくいかもしれません。
実は、「レースモード」に切り替えトラクションコントロールを解除した直後、最終コーナーで危ない時がありました。
ハイサイドになりそうな瞬間でしたが、上手くコントロールでき、ハイサイドを回避できました。
これはオーバーサスペンションの効果だったかもしれません。
このように、最終的には、リヤのグリップを感じやすくなったことで安心感が増し、攻めたくなったというのが、感想です。
現代の車両は、電子制御が進んで転倒のリスクを回避していますが、このオーバーサスペンションは別の次元で転倒のリスクを回避してくれそうです。
「転倒回避の為の保険」としても意味ある商品だと思います。
個人的には、グリップ力を感じやすくなったので、ライディングを楽しんで頂ける商品だと思います。
今回のテストはサーキットだったため、次回はツーリングで試したいです。
ツーリングや街乗りでは、路面がサーキットより悪いので効果の高い商品となりそうですね。
鈴木 大五郎
AMA参戦、JSB1000、鈴鹿300km、鈴鹿8耐などのレース活動の他、二輪雑誌(モーターサイクリスト・ライダースクラブ・ロードライダー等)でライターとしてインプレッションを執筆。また2014よりBMWが主催するライダートレーニングのBMW公認インストラクターを務める。
CASE2 佐藤 太紀氏
COURSE:Okayama International circuit
BIKE: DUCATI PanigaleV2
サーキットでオーバーサスペンションの実走テストをして以下にまとめました。
バタバタとしたリヤサスの余分な動きを軽減し、スイングアームを中心とした車体の動きがしっとり(滑らかになる)しました。
具体的効果は以下の2点が挙げられます。
1.縁石や路面のギャップに対する追従性の向上
走行中、ギャップに対して何らかの反応があった際、そのショックをオーバーサスペンションが相殺してくれる。路面への追従性が増し、安定感を向上させることができる。
2.リヤのトラクションのコントロール性の向上
バイクがバンクしている状態から立ち上がるにつれてアクセルを開けるとスイングアームはリアサスが伸びる方向に動きます。さらにコーナーでは遠心力と加速時の慣性が加わればリアサスが沈みます。これら相反する動作においても、素直に反応してくれました。
そのため、コーナーの立ち上がりでよりリヤにトラクションをかけてタイヤのグリップを引き出したい時や、スライドをさせて向きを変える動作がしやすくなりました。注意事項としては、グリップの最大値が変わるわけではく、コントロール性が向上し、より限界値に近いところで走りやすくなるという点です。リアサスの余計な動きがなくなることで、グリップアウト=ハイサイドが起きる原因を90%抑制するという点も合点がいきました。
まとめ
・街乗りで期待出来そうな点
個人的には、グリップ力を感じやすくなったので、ライディングを楽しんで頂ける商品だと思います。
ワインディングロードでの減速帯やバンピーな路面での走行において車体が受けるショックを緩和することでより安定した状態でコーナーにアプローチ出来、走りがさらに安全で楽しくなると思います。
・サーキットで期待出来ること
コントロール性が向上する為、より限界値に近いところで走れる。結果的にラップタイムの向上が期待できる。
縁石で車体の乱れが安定するので積極的に走れると感じた。
ハイサイド90%防止ツールという表現も、確かに理解できた。
佐藤 太紀
2020年より、アプリ/web開発会社AirPlant's最高執行責任者としてHP作成からライディングスクール開催をはじめとした、モータースポーツ事業と活動の幅が広い。2013年より全日本ロードレースや鈴鹿8耐にも参戦し、数々の実績を残す。
2020年は山科カワサキ・オートレース宇部 YICよりJSB1000クラスでランキング4位。
CASE3 伊丹 孝裕氏
COURSE:TSUKUBA1000
BIKE: DUCATI PanigaleV2
「レースモード」に設定して電子制御の介入を減らし、トラクションコントロールを解除して試乗しました。
オーバーサスペンションの設定を(-)にするとリヤの情報が希薄になって恐いと感じました。逆に(+)だとグリップをいつも以上に感じました。
技量やコース等、セッティング次第では、この商品の価値を高められると思います。鈴鹿のような高速サーキットで試してみたいですね。
(+)から(-)まで、とてもリヤのグリップの感触が変わります。
オーバーサスペンションの設定は簡単に調整出来るようになっているので、車種の特性とご自身の乗り方にあわせてセッティングを楽しんで欲しいと思います。
とても興味深いアイテムだと思います。
伊丹 孝裕
フリーのライター&エディター時々レーシングライダー
2輪専門誌の編集長を務めた後、独立。雑誌やウェブ媒体への寄稿の他、マン島TTや鈴鹿8耐、パイクスピーク等ではライダーとしても活動。
オンロードだけでなくオフロードも走行できる、幅広く走れるフリーライター。
CASE4 中野 真矢氏
COURSE:TSUKUBA1000
BIKE: DUCATI PanigaleV2
「レースモード」でトラクションコントロールを解除してテスト。オーバーサスペンションの設定で(-)方向に一杯ではスイングアームが長くなったかのようによじれてしまう。
立ち上がりもいつもふられていている状態で積極的に攻めれない。逆に設定を(+)方向一杯にすると設置感が高まり安心感がでて、コーナーでも直線でも攻めたくなるほど印象が良くなった。このことからもオーバーサスペンションの設定次第で、色々な走行に対応出来ると面白さを感じた。こんな簡単に別物になるのかと驚いた。
実は現役時代もこの手のテストをしていたんですよ(笑)。
中野 真矢
1998年、全日本ロードレース選手権GP250チャンピオンを獲得した後、1999年よりロードレース世界選手権に参戦。
MOTO GPでの参戦の後、スーパーバイク世界選手権にも参戦。甘いマスクが人気でニックネームは「王子」。
とにかく転倒しない、転倒しても重傷を負わないステディなライディングで知られている。
2008年、モーターサイクルファッションブランド、"56design"を千葉にオープン。レーサーとしてだけではなく、プロデューサーとしても活躍の幅を広げている。
CASE5 宮城 光氏、小川 勤氏
COURSE:TSUKUBA1000
BIKE: DUCATI StreetFighterV4
宮城氏:
何かをすれば必ず何らかの「変化」があるものです。それが良い物かどうかの「評価」は、「変化」とは別問題です。この商品の「変化」と「評価」を混乱しないように、慎重にテストを行いました。ライディングモードは、スポーツモードで固定し、トラクションコントロールの設定もそのままにしました。検証方法です。
・ストックの状態で乗る
・オーバーサスペンションを取付し、(-)方向一杯に全開に設定して走行
・オーバーサスペンションの設定を(+)方向一杯に全閉にして走行
・再度、ストックの状態に戻して走行
・再度、オーバーサスペンションを取付し(-)方向一杯に全開に設定して走行
このように、変化の具合を確認しその変化の確証をとりながら行いました。
結論として、とても興味深い商品でした。
走り出して違いがすぐに分かります。ただ、いつまでもその違いが分かるものではないです。良い商品とはそんなものだと思います。悪ければすぐに外したくなりますよ。サーキット走行だけでなく、街乗りやオフロードや通勤という方にメリットを出せそうです。ぜひ、そういった車種にも開発をして欲しいですね。
小川氏:
僕は宮城さんと一緒にテストを行いました。テスト方法は、宮城さんと同じです。
テストを繰り返すうちにリヤタイヤのグリップ力が増し、コントロールしやすくなっていることに気付いていました。
テストの最終段階で、再度ストック状態に戻して走行するのですが、とても怖い思いをしました。
ストック状態に戻っただけなのに。驚きでした。それだけ、オーバーサスペンションがグリップ力を増してくれていた事を知りました。
実は、この後ストック状態で1コーナーにむけてアプローチ出来なくなりました。たったこれだけの商品なのに、本当に驚きです。
宮城 光
元Hondaワークスライダー。全日本GPおよび全米選手権などで多数のチャンピオン獲得の経験を持つ。現在は、Hondaのフォーミュラドリームや安全運転講習で講師を行うほか、ホンダ・コレクションホールで動態確認を行っている。また、日本TV・MotoGP解説やTeam無限・電動レーシングマシン開発を行っている。
小川 勤
RIDE HI編集長。18歳からSRを所有し続け、カスタムと走りを探求。世界各地で行われる試乗会に参加し、最新モデルの進化を熟知する。現代のバイクに合ったライテクや最新パーツにも精通する